※以下は症例報告を要約・抜粋したものです。
【要 旨】
肺にびまん性に微少骨が形成されるびまん性肺骨形成は(diffuse pulmonary ossification; DPO)は、生前に診断されずに、剖検で診断される例が多い。
【はじめに】
びまん性肺骨形成は(diffuse pulmonary ossification; DPO)は、数mm程度の大きさの微少な骨形成が、肺に広範囲にみられる状態であり、剖検時において稀に認められる。 壊死巣や瘢痕巣での骨形成は、DPOに含まれない。
【症 例】
患者:84歳女性
病歴:患者は、糖尿病、高血圧及び心房細動に対して通院治療を受けていたが、急に胸痛、呼吸苦及び四肢の浮腫が出現し、さらに増悪傾向を示したため入院となった。入院時の胸部レントゲン写真は、心拡大及び高度の肺うっ血・水腫像を示した。心超音波検査では、左室肥大と左室壁運動低下が、また心電図では、心房細動が認められた。患者は、心不全及び頻拍性心房細動と診断され、人工呼吸器装着下での治療を受けたが、腎不全、敗血症を併発し、入院から約1ヶ月後に死亡した。
主要解剖所見:(1)心・血管:心重量は490gで、心は、高度の左室肥大を呈していた。僧房弁は、線維性硬化を示すとともにグラム陽性球菌による高度の感染性疣贅の形成を伴っていた。さらに化膿性心筋炎、心外膜炎の合併も認められた。大動脈及びその主要分枝には、高度の粥状硬化が認められた。
(2)肺:左右の肺重量は、各々 280g、330gで、肺は、軽度の肺うっ血像を呈していた。肺うっ血以外の所見として、両肺全葉に分布する肺胞内微少骨形成像が広範囲に認められた。肺胞内の骨成分には骨細胞及び層板構造が認められ、比較的大きな骨組織では骨髄腔の形成も認められた。肺の一部を細説切し、5%次亜塩素酸溶液で一晩処理することによって、直径4mm以下の微分な分岐のない骨が多数得られた。
(3)肝, 膵, 腎, 骨髄:肝には心不全に起因する高度の小葉中心性肺うっ血像及び肺血症に起因する細胆管炎が認められた。糖尿病を反映して、膵ではランゲルハンス島の高度の硝子変性が認められ、腎には軽度の腎盂腎炎ととも高度の糖尿病性腎硬化症が認められた。僧房弁の感染症疣贅に起因する敗血症を反映して、肝、脾、骨髄には,多数の血球貧食が認められた。
【考 察】
本症例は、糖尿病、高血圧、心房細動の通院治療中に、増悪する心不全及び心房細動を発症し入院したが、その後腎不全、敗血症を併発し死亡するに至った症例である。入院時において、高度の肺うっ血・水腫が認められたが、剖検時における肺のうっ血の程度は軽度であった。この症状の緩和は、入院時において心不全に対して適切な治療が行われたことによる結果であると推測される。
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