犬・猫・ウサギ・フェレット・ハムスター等、小動物の診察・各種手術及び入院、術後のリハビリ【セントラル動物病院:尼崎・武庫之荘】

セントラル動物病院
兵庫県尼崎市南武庫之荘2-5-22 TEL06-6438-3966
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院長の研究発表

渡辺院長のプロフィールと研究発表のページです。

プロフィール 症例報告 兵庫医大での研究テーマ
研究発表
 
症例報告:

犬の乳腺及び脾臓の骨外性骨肉腫
Canine cases of extraskletal osteosarcomas in the mammary gland and spleen

渡辺博文 Hirohumi WATANABE-(1), (4)
小嶋一夫 Kazuo KOJIMA-(2)
佐々泰則 Yasunori SASA-(3)
山根木康嗣 Kohji YAMANEGI-(4)
山田直子 Naoko YAMADA-(4)
大山秀樹 Hideki OHYAMA-(4)
寺田信行 Nobuyuki Terada-(4)
中正恵二 Keiji NAKASHO-(4)

(1)セントラル動物病院:〒661-0033兵庫県尼崎市南武庫之荘2-5-22
(2) 小島動物病院:〒575-0032大阪府四条畷市米崎町14-5
(3)日吉台動物病院:〒569-1121大阪府高槻市真上町6丁目15-5
(4)兵庫医科大学病理:〒663-8501兵庫県西宮市武庫川1-1

■謝 辞
有限会社エイド鶴智弘氏のご協力に感謝いたします。

【連絡者】 渡辺博文
  兵庫医科大学病理
〒663-8501兵庫県西宮市武庫川町1-1
電話:0798-45-6431Fax:0798-45-6431
  E-mail:hirokun@central-ah.com

【要 約】
犬の骨外性骨肉腫は稀な腫瘍である。今回犬の乳腺と脾の骨外性骨肉腫を経験したので報告する。乳腺の骨肉腫は、13歳雌秋田犬の左第4乳腺の乳頭近傍に発生した腫瘍で、直径約3cmの球状の腫瘍であった。組織学的には、骨形成型の骨肉腫像を示した。脾の骨肉腫は、12歳雄雑種犬の脾に発生した腫瘍で、大きさは9×8×7cmであった。腫瘍は、一部に嚢胞を形成する充実性腫瘍であり、組織学的には、軟骨形成型の骨肉腫の像を示した。
キーワード:骨外性骨肉腫、乳腺、脾臓

【はじめに】
骨肉腫は、腫瘍性の類骨および骨を形成する悪性間葉系腫瘍であり、骨肉腫には、骨又は骨表面に発生する骨原発骨肉腫の他に、骨とは無関係な部位に発生する骨外性骨肉腫がある1-3)。犬では、骨原発骨肉腫は、悪性骨原発腫瘍の中では最も頻度の高い腫瘍であるが、骨外性骨肉腫は骨原発骨肉腫に比べると、発生頻度は著しく低く、稀な腫瘍である1.2)。今回我々は、乳腺と脾臓に発生した骨外性骨肉腫を経験したので報告する。

(症例1)
症例は、13歳の体重25kgの雌秋田犬であった。左の第4乳頭の傍の腫瘤が、最近大きくなってきたため、小嶋動物病院に受診し、腫瘤摘出術が行われた。骨を含む全身の他の部位での腫瘍の存在を示す所見は、なかった。手術後1ヶ月半の現在、転移、再発の兆候はない。
摘出された腫瘍は、直径3cmの球状の腫瘍であり、中央に壊死が認められた。(図1)。腫瘍の辺縁は、紡錘型の腫瘍細胞が交錯する細胞束を形成する線維肉腫様組織像で占められていたが、内部では腫瘍細胞による著しい類骨形成が認められた(図2)。類骨には、一部で石灰化が認められた。又、類骨形成部では、破骨細胞様巨細胞が多数認められた(図2)。この腫瘍では、類骨形成部が大部分を占めるので、この腫瘍を骨形成型骨肉腫と診断した。

(症例2)
症例は、12歳の体重8.35kgの雄雑種犬であった。最近軟便が続き、しかも散歩中に時々虚脱状態となるので日吉台動物病院に受診した。触診及びレントゲン検査で、腹部に腫瘤が認められたため、試験開腹を行った。胃に一部癒着した、脾の腫瘤を認められたため脾を摘出した。骨を含む他の部位には、腫瘍は認められなかった。しかしながら、術後8日目に死亡した。 脾に9×8×7cmの腫瘍を認めた。腫瘍の表面は、凸凹を示し、その色調は暗赤色の部分を交えた灰白色であった。

腫瘍の割面では、一部に暗赤色の部分を見る灰白色の充実性の部分と灰白色の壁を持つ嚢胞が認められた。(図3)腫瘍では、紡錘型の腫瘍細胞が交錯して走行する像が認められると共に、腫瘍細胞による軟骨形成が広範囲に認められた(図4)腫瘍は、類骨を形成していたが、その領域は僅かであった。(図4)この腫瘍では、軟骨形成部が優位であったので、軟骨形成型骨肉腫と診断した。

【考 察】
2症例の腫瘍の組織像は、典型的な骨肉腫の組織像を示したが、2症例共に骨に腫瘍は存在しなかった。従って、2症例の腫瘍は、骨原発骨肉腫の転移ではなく、骨外性骨肉腫である。
Langenbath等2)の169例の犬の骨外性骨肉腫の解析では、乳腺の骨肉腫が64%を占めており乳腺は、犬の骨外性骨肉腫では、最も発生頻度の高い臓器であった。一方、乳腺以外の骨外性骨肉腫の発生部位では、脾が皮下組織(体幹、四肢)に続き発生の多い臓器であった。従って、本症例は、骨外性骨肉腫の発生頻度の比較的高い臓器に発生した骨外性骨肉腫である。なお、骨外性骨肉腫は、この他消化管、肝臓、腎、膀胱、筋、目、甲状腺、皮膚、副腎、睾丸等多彩な臓器に発生した事が報告されている(参考文献:1-3)
乳腺の骨肉腫は、13歳の雌に、また脾の骨肉腫は12歳の雄に発生した。骨外性骨肉腫の発生した犬の年齢や雌雄差に関しては、乳腺の骨外性骨肉腫は、すべて雌に発生し、その平均発生年齢は10.6歳で、乳腺腫瘍のそれ(11.8歳)とほぼ同じである事が報告されている2)。一方、乳腺以外での骨外性骨肉腫では、その発生平均年齢(9.7歳)は、骨原発骨肉腫のそれ(9.4歳)とほぼ同じであり、雄雌での発生に差がない事が報告されている(参考文献:2)
骨外性骨肉腫の予後は、非常に悪い(参考文献:1-3)。Langenbath等(参考文献:2)は、診断後、骨外性骨肉腫と関連のある理由により安楽死処分された、又は死亡した72症例の平均生存期間を検討し、平均生存期間は、乳腺の骨外性骨肉腫で90日、それ以外の骨外性骨肉腫で26日である事を報告している。又、彼等は、最大の理由は、乳腺の骨外性骨肉腫では、肺転移(62.5%)であり、乳腺以外の骨外性骨肉腫では、局所再発である事を報告している。幸いにも、乳腺の骨外性骨肉腫症例は、健在であるが、肺転移の定期的な検索が必要であると思われる。この症例では、化学療法は行われていないが、骨外性骨肉腫の治療に関しては、少数例の解析により、手術とその後の化学療法は、延命効果があると報告されている(参考文献:3)

■参考文献

1: Patnaik AK: Canine extraskeletal osteosarcoma and chondrosarcoma: a clinicopathologic study of 14 cases, Vet Pathol 27, 46-55 (1990)
2: Langenbath A et al.: Extraskeletal osteosarcoma in dogs: a retrospective study of 169 cases (1986-1996), J AM Anim Hosp Assoc, 34, 113-120 (1998)
3: Kuntz CA et al.: Extraskeletal osteosarcomas in dogs :14 cases, JAM Anim Hosp Assoc, 34, 26-34 (1998)
 
症例報告: びまん性肺骨形成(diffuse pulmonary ossification; DPO)
の一例
渡辺 博文, 大山 秀樹, 山根木 康嗣, 山田 直子, 寺田 信行, 中正 恵二
(兵庫医科大学病理学 第1講座)
■別冊請求先:大山 秀樹
 〒663-8501 兵庫県西宮市武庫川町1-1
 兵庫医科大学病理学 第1講座

※以下は症例報告を要約・抜粋したものです。

【要 旨】
肺にびまん性に微少骨が形成されるびまん性肺骨形成は(diffuse pulmonary ossification; DPO)は、生前に診断されずに、剖検で診断される例が多い。

【はじめに】
びまん性肺骨形成は(diffuse pulmonary ossification; DPO)は、数mm程度の大きさの微少な骨形成が、肺に広範囲にみられる状態であり、剖検時において稀に認められる。 壊死巣や瘢痕巣での骨形成は、DPOに含まれない。

【症 例】
患者:84歳女性
病歴:患者は、糖尿病、高血圧及び心房細動に対して通院治療を受けていたが、急に胸痛、呼吸苦及び四肢の浮腫が出現し、さらに増悪傾向を示したため入院となった。入院時の胸部レントゲン写真は、心拡大及び高度の肺うっ血・水腫像を示した。心超音波検査では、左室肥大と左室壁運動低下が、また心電図では、心房細動が認められた。患者は、心不全及び頻拍性心房細動と診断され、人工呼吸器装着下での治療を受けたが、腎不全、敗血症を併発し、入院から約1ヶ月後に死亡した。

主要解剖所見:(1)心・血管:
心重量は490gで、心は、高度の左室肥大を呈していた。僧房弁は、線維性硬化を示すとともにグラム陽性球菌による高度の感染性疣贅の形成を伴っていた。さらに化膿性心筋炎、心外膜炎の合併も認められた。大動脈及びその主要分枝には、高度の粥状硬化が認められた。

(2)肺:
左右の肺重量は、各々 280g、330gで、肺は、軽度の肺うっ血像を呈していた。肺うっ血以外の所見として、両肺全葉に分布する肺胞内微少骨形成像が広範囲に認められた。肺胞内の骨成分には骨細胞及び層板構造が認められ、比較的大きな骨組織では骨髄腔の形成も認められた。肺の一部を細説切し、5%次亜塩素酸溶液で一晩処理することによって、直径4mm以下の微分な分岐のない骨が多数得られた。

(3)肝, 膵, 腎, 骨髄:
肝には心不全に起因する高度の小葉中心性肺うっ血像及び肺血症に起因する細胆管炎が認められた。糖尿病を反映して、膵ではランゲルハンス島の高度の硝子変性が認められ、腎には軽度の腎盂腎炎ととも高度の糖尿病性腎硬化症が認められた。僧房弁の感染症疣贅に起因する敗血症を反映して、肝、脾、骨髄には,多数の血球貧食が認められた。

【考 察】
本症例は、糖尿病、高血圧、心房細動の通院治療中に、増悪する心不全及び心房細動を発症し入院したが、その後腎不全、敗血症を併発し死亡するに至った症例である。入院時において、高度の肺うっ血・水腫が認められたが、剖検時における肺のうっ血の程度は軽度であった。この症状の緩和は、入院時において心不全に対して適切な治療が行われたことによる結果であると推測される。

 
 

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